04:バレンタイン


 まじかあ、というのが初めにきた。

 二宮隊の作戦室に二人。高校三年の二月ともなれば自由登校が認められている犬飼が一番乗りで、その次に隊長である二宮がやってきた。きちんと挨拶を交わしつつ私物や貴重品を管理するロッカーに荷物を入れる二宮のコートは黒のチェスター。隊服もスーツ、私服もシャツにスラックス。二宮さんって高校生のころジャージ着てたのかな、と脳内で着せ替えさせかけたところで、「それ」に気づいた。

 二宮のロッカーの下、彼の革靴のそばに溢れおちるような格好の小箱。しかも紙袋に入っている。

 はて、と考えた。二宮は作戦室に入ってくるとき、あんな袋を持ってきていただろうか。確かに今日は二月の盛大なイベント当日だが、行きに貰ってきたものなら手に持っていて気づいたはずだ。彼の鞄はあの袋が入るほど大きくない。

 たどり着いた結論に思ったことは、まじかあ、というのが初めにきた。

 すぐに教えたほうがいいのか悪いのか、二宮がコートをロッカーにかけるのを眺める間に考え込んでしまう。っていうかそれ誰宛て? なんでロッカー? ボーダーで渡すってことは関係者?

「犬飼」

「あ、はい?」

「あの袋、置いて帰るなよ」

 楽なセーター姿になった二宮は作戦室の隅に置かれたロッカーに入りきらない犬飼の荷物を指差して言った。犬飼はどちらかといえばモテたいしモテるよう振舞っているので、チョコ歓迎のポーズに捧げられる贈り物はそこそこの数になっている。

 当たり前ですって、なんて返しつつ、犬飼はとうとう腹を決めた。

「そういえば、辻ちゃんとひゃみちゃん今日は遅くなるかもって言ってました。なんか二年生の集会があるとかで」

 わざとらしくならないよう、なんでもない話を続けながら手元の缶コーヒーに視線を落とす。二宮は疑うでもなく短い返事をして、ロッカーの扉に手をかけた。気づけ、気づけ。

 閉じかけて、ふと下を見た二宮が一瞬動きを止めた気がした。

「あ、そうだ。二宮さんってボーダー提携で進学するとき特別な書類とか書かされました? たぶんあらかた出し終わってるんですけど、補助が出るとか出ないとかあるじゃないですか」

「補助については大学とボーダーで管理されている、問題ない」

「あーやっぱり。よかったよかった」

 二宮はそっと腰を落とし、素早く拾ってロッカーに突っ込み直すと心なしか勢いよく扉を閉めた。その音にびっくりした振りをして、様子を伺っていた視線を上げる。振り返った二宮と肩越しに目があった。

「や、急に大きな音がしたから」

「悪い」

「いやいや、大丈夫です」

 二宮のポーカーフェイスは崩れない。

 最近隊長が誰かとご飯を食べに一人で出て行くのを知っているだけに、犬飼の目はにんまり三日月型になってしまう。いつも通りの顔を装えているはずなのに、二宮が不機嫌そうに眉を顰めたのがわかったので噴き出してしまいそうだった。