フリップ


「フリップ様!」
「…ああ、か」

 ゆっくりと、威厳がある体が振り向く。金髪を今日も綺麗に撫で付けて、清潔感の漂うフリップ様は、私の所属する蒼の派閥の顧問召喚師と、派閥で取り扱う用具のすべての管理を兼任されている。彼は誰よりも向上心のある召喚師で、上へ上へと上り詰めようと努力をしておられます。

「これが今回のファナンの荷のリストです」
「ご苦労」
「いえ、フリップさまのためと思えばこの程度」

 思わず頬が緩んでしまう。私は、本来は蒼の派閥には居てはいけない身分の出である。祖父が金の派閥の召喚師だった。なのにフリップ様はその経歴を見なかったことにして、私をこうして彼の秘書に取り立ててくれた。物心ついて早々に父を失くした私にとって、フリップ様は本当の父以上に大事な人になっていた。

 フリップ様も、元々は成り上がりの方だ。私ほどのポストになれば書類の閲覧もできるのだからそれを知られていることもフリップ様はご存知だろう、なのに私を責められない。

は、私のために尽くしてくれるな?」
「ええ、はフリップ様のために死ねます」
「いい子だ」

 偽りは一バーム分も含まれていない。フリップ様が裏でどんなことをしていようと、私のことを本当はどう思っているかはわからなくとも、私のこの気持ちだけは本物であり純粋なものだ。フリップ様が好きだ、フリップ様をお守りしたい。たとえ蒼の派閥の裏切ることがあっても、それはフリップ様のためだと胸を張って叫べる。

 だから、私は、総帥に牙を剥いた。暴れたせいで全身の筋肉がびしびしと音を立てて、私を取り押さえる兵士たちが何本もの槍の柄で私を地面に縛りつけようとする。激しい呼吸と鋭い視線は、まるで獣のようだと、自覚していた。唸り声のような声を上げて、私は兵士たちに抵抗する。

「…君がだね」
「離せ、離せ!! フリップ様はどこだ!!」
「すまない」

 どうして謝る、貴様が謝るべきは私ではない、フリップ様に謝罪するべきなのだ! どうしてあの方の血の滲むような努力を評価してさしあげなかった、どうしてあの方のひたむきな向上心を見ていながらあのような態度をとり続けた! 彼は自分を凡人だ凡才だ、成り上がりでさえなければと嘆いておられたのに、どうしてそれを救えたのがお前だけだった。どうして少しでも振り向いてさしあげられなかったのだ!

、お前も来なさい」
「……フリップ、様…?」

 だから、貴方の導く先が悪魔の道でも、私はその手を取りました。