がららん、と、古びた鈴が鳴る。扉にくくり付けておくための紐がそろそろ寿命だった気がするなぁ、と思いつつ、私は振り向く。あいたた、ずっと下を向いていたからか腰や首が痛い…。
「お久しぶりですね、セシルさん」
「ええ、も元気そうね」
「まあこの仕事、体力無しじゃ務まりませんから」
ごとん、と重たいハンマーを床に落とす。床はべこべこにへこんでしまっている。ここも金属板張りにしないと大変そうだ、ただでさえマイナーな武器ばかりを取り扱っているのだから品質は大事にしないといけない。
大事な大事なお得意様は、私の作るグローブを気に入ってくださっているのだから。
「今日は」
「もっと重くしてもいいわ、攻撃力が欲しいの」
「そうですか、失礼」
「あ」
セシルさんにはしっかりと断ったから、これは断じてセクハラでは、ありません。セシルさんの肩、腕、関節の可動域、筋肉の損傷具合を確かめるように触って叩いていく。ストラこそ使えませんが、私はもともと医者を目指していたこともあった若者時代をすごしていまして、まぁ、無理して強い武器を使おうとする人には売りたくないというわけです。
ぽん、と肩を叩いて、私は巻尺を取り出す。
「だめです、ただでさえ最近酷使してるでしょう」
「そんなこと…」
「グローブを見れば分かります。最近になって急に損傷が激しくなりましたね」
それは、たぶんこの北スラムの頭が原因だということくらいは分かっている。もともと、彼女が看護婦だったころからの付き合いなのだから、何に対して拳を振るうのか、どういう状況において彼女が戦いを決めたのかは理解しているつもりだ。私の使い物にならなくなりかけた足も、あなたが居てくれたからこうして地につけられる。
「できるだけ重くしますが、限度は設けますよ」
「…」
「返事は?」
私はあなたの命を守っている。攻撃は最大の防御とも言えるのですからそれくらい自負させてもらってもいいでしょう。あなたのストラで生き延びることができて、私は心底幸せだと思っています。もっとも、あの戦場で出会った看護婦さんの武器を作っている自分が未来に居るだなんて想像もつきませんでしたが、それはご愛嬌です。
「…はいっ」
「よろしい」
だから、古傷が痛んでも、あなたを守るために金槌を振り続けることを約束します。