キール


「どうしたの、なにか用事?」

 迷い込んできた動物は返してあげる主義だけど、進んで迷った勇敢と無謀を履き違えてるやつは実は嫌いだったりするんだよね。白いマントはきれいだけど、前にも君には匂わせてみたつもりだ。きれいなものには破壊されてこそ現れるものがあるっていうことと、俺はそれを破壊してみたい気があるっていうこと。

「…いや、別に」
「やだなぁ、つれないなぁ、お兄さん寂しいなぁ」
「……」

 そう露骨に嫌がるなよ、さすがに傷ついちゃう。

 でも、別に、の一言で済んじゃう用事なんかじゃ君はこっちへは来ない。なんの用事っていうのは、用事によってはここで俺がお相手しなきゃなんないのか、穏便に話し合いで解決できるのかが決まるだけに俺が黙っておくことはなかなかできないお約束っていうやつなんだよね。がっしりとした獲物の柄を掌で跳ねさせて、刃で円を描く。

「さて、一回だけ尋ねてあげよう」
「なんでしょう」
「君は、俺らのバノッサさんに用事があって来たのかな?」

 ざわっと、気配が変わった。

 おやおや、どうやら大当たりだ。召喚組み合わせが当たったときくらい嬉しいね。でもどうやら君が懐に忍ばせていたのは誓約済みか? これは手加減してあげる必要はなさそうだ。風を切る音を大きく立てて、体ほどある槍の先端を彼に向ける。

「俺は女の子以外に手加減はできないよ!」

 召喚師相手だと特にね。