右目から真っ青な花が咲く病気


 情けない。ベッドに縛り付けられたような俺は、指一本動かすのにも体力を使わなければならなくなってしまった。暗殺者としてだけでなく人間としても、俺は再起不能になってしまったのだ。



 視線だけで応える。俺の右の視界いっぱいに咲き誇る青い花弁のせいで上手く見えないが、リゾットだ。もういいと言っているのに、また俺に優しくしにきたのだろう。

「今日はアネモネだ。喉は渇いていないか」

「渇いてねえ」

「そうか」

 リゾットの手には華奢な小瓶が握られていた。中には半透明のとろっとした液体が入っている。俺の生命線だ。俺は、リゾットに生かされている。

「リゾット、俺は」

「黙れ。聞きたくない」

「リゾット」

。二度も言わせるな」

 殺してくれ。

 そう懇願したのは、もう片手では済まない。その度にリゾットは心底辛そうな顔をして、俺を見る。そんな顔をさせたくないから俺は死にたいのに、うまくいかないものだ。敵のスタンド攻撃の進行した俺は一人では歩けないほど衰弱していて、自分を殺すことすらできやしない。

「俺はお前に生きてほしい。なんだってする、ただ生きてさえくれればいい」

「死ぬまでは生きるよ」

。頼む」

 俺が、俺が生きてリゾットを縛る。かけらも望まない未来だ。

 また否定しようと息を吸うと、肺の奥が引きつったように硬くなる。指先がにわかに緊張した。発作の前触れだ。いまここで花の蜜を取らなければ、一時間のうちに呼吸器が麻痺するだろう。これを悟られずに眠ってしまえれば、俺はそのまま目覚めることなどないはずなのに。

 リゾットは聡い。俺の一瞬の乱れに気づいてしまって、小瓶の蓋を開けると俺の唇に当てる。ふわっと香る甘い香りに、頭の奥が痺れる。

 唇を開くのも億劫で反応を返さずにいると、リゾットは瓶を自分で煽って、湿った唇を俺のとくっ付ける。こんなことする必要ないのに。ばかなやつ。

 こじ開けられた隙間から甘い蜜が垂れると、俺の身体は意識とは反対に活発化し、息を吹き返す。やめてくれ、黙って死んでろと叫んでも、俺の心臓はまた柔らかく鼓動を打ちはじめる。

「楽に、なったか。

 唇を蜜で濡らし、リゾットはまた笑った。楽になりたい俺は、泣くこともできず、黙ってリゾットの目を見ていた。





は右目から真っ青な花が咲く病気です。進行すると体が動かせなくなってきます。花の蜜が薬になります。)