「任務完了、被害は最小限だ」
「よっしゃ! 今回も決まったぜ!」
鈍い震動を立てて、ヴァジュラの巨体が愚者の空母に沈み込んだ。時計をちらりと覗き、は警戒するように辺りを見回したが、ユーバーセンスに引っ掛かるアラガミ反応がないことを確認すると神機を捕喰形態へと変える。
「いやー、合流される前に倒せて良かったね」
「やはり、討伐時間の短縮は重要だな」
アサルト系の旧型神機を使うコウタは、二人の捕喰の様子を手持無沙汰そうに見つめる。神機の刀身を呑みこむように現れる黒い獣は牙を立ててヴァジュラに噛みつき、ごくりとオラクル細胞と核を回収した。キラリとブレンダンのバスターブレードのコアが輝く。
「お、レアものだな」
「やったじゃん! なあ、は?」
「残念。特に珍しくはないわ」
「そっかー」
コウタの視線は、二匹目のヴァジュラに食らいつくへ向かった。細身の体ながら神機を振るうのは女性のゴッドイーター全員に当てはまるが、それにしてもやはり彼女は頼りになった。アラガミへの嫌悪感が強すぎるのが難点だが、ミッションが終われば自分より少し年上なだけの、普通の少女だ。
彼女はコアが煌めくのを見てから、ちらりとエイジス方面を見た。そのまま立ちすくむは三秒経っても動かない。
「うわ!」
声を掛けようかと思った途端、強く海風が吹いた。コウタは飛ばされないようにと慌てて帽子を押さえる。潮の香りに紛れて、さざなみの音が体に重く響いた。それを合図にしたように、はいつも通りの表情で振り向く。
「もう帰りましょう」
短く言って、空母の端からコウタとブレンダンの横を通り過ぎていく。先ほどの背中が妙に頼りなく見えてしまい、コウタは思わずの顔を見ようとして、ふとそれに気付いた。ブレンダンも同じようで、彼は軽く笑う。
「珍しいな、あいつが鼻歌なんて」
すれ違いざまに聞こえたふわりとしたはっきりしない旋律だったが、確かにあれはの声だった。コウタも目を丸くしたまま彼女の背中を見つめていたが、すぐさま謎の既視感に苛まれ首を傾げた。
「……?」
「コウタ、俺達も行こう」
「あ、今いくよ!」
モウスィブロウを片手に、ブレンダンと並んで歩きながら、コウタは記憶を探りながら唸る。どっかで聞いたことある、どこだ、いつだ。ふと先ほどの彼女の背中とエイジスが重なった。
「あ」
するりと、案外早くに思考の糸は解けた。シオだ。シオの服が完成した時に、彼女が歌ったあのメロディ。そうだ、いつの間にアイツはシオに歌なんて教えたんだろうって皆でにやにやして――そこまで考えて、コウタは第二の疑問にぶつかった。
「え?」
「コウタ? さっきからどうした、大丈夫か?」
「大丈夫だけど……え? 教わったの?」
コウタの背に、また強く潮風が吹きつけた。