ヘリからA地点に降り立つと、贖罪の街を眺めていた少女が振り返った。その細腕には大事そうに新型神機が抱えられている。相棒であるロングブレードを担いで、シュンは片手を上げた。
「よう、お前ら早すぎだっつーの!」
「そうでもないわ、私もソーマもさっき来たばかりだから」
そう言っての視線が流された先には、モッズコートのフードを深々と被った男が、真っ白な神機を片手に立っていた。シュンは思わず気まずそうに顔をしかめたが、一つ呼吸をして視線を第一部隊のリーダーへと移した。今回のミッションはこの三人で行われるらしい。第一部隊の隊長と強襲兵を連れての単体討伐とは、シュンにとって願ってもない楽な任務である。
「じゃあさっさとブリーフィング済ませて行こーぜ?」
「もうE地点に居る、全力で叩きましょう。行くわ」
「……行くぞ」
「あっ、ちょっ! お前ら!」
ミッション前のブリーフィングをものの五秒で片づけて、がA地点から飛び出した。それに後れを取らずにソーマも飛び降りる。そういえば彼女の装甲の固有スキルはユーバーセンスだった、とその背中を見送ってから、シュンも慌ててスタート地点を蹴った。着地の衝撃を足のバネで往なして、すぐに体勢を立て直す。
「……っしゃ、倒しまくるぜ!」
二つに分かれた道を右へ駆け出すと、コンゴウの咆哮が聞こえた。既に戦闘は開始されたらしい。集団行動における協調性に難あり、と評されたこともあるが、今回についてはあの二人がせっかちなのだ、とシュンは足を速める。
大きなビルの影から抜けると、E地点で悲鳴を上げるコンゴウが転がり攻撃を繰り出すところだった。二人はそれを見切ったようにステップを繰り出し、無防備なパイプの生えた背中に剣劇を叩き込んでいく。
「目障りだ……消えろ!」
ソーマがチャージクラッシュを振り抜く。直撃を喰らったコンゴウは堪らず悲鳴を上げ、尻餅をついた。それに追い打ちをかけるべくは跳ね上がり、よく整備されたブレードをぎらりと煌めかせた。ガツリと刃を突き立て、次の一撃でとうとうパイプは鈍い音を立てて砕け散った。着地すると同時に銃形態へと神機を変形させ、前転する。
「まだ足りない」
コンゴウの目の前に立ち、躊躇いなく引き金を引く。至近距離で撃ち込まれる高威力のバレットに大きく吼え、コンゴウは両腕を振り回すが、ガキリと鈍い音を立てて攻撃は阻まれた。風が吹き、爆煙が流れる。
「俺にもやらせろよな!」
とコンゴウの間に滑り込んだシュンは、展開した盾を閉じ、ロングブレードですぐさまコンゴウの横を切り抜けていく。身を低くして移動するシュンを追い切れず混乱するコンゴウは視線をうろつかせるが、今度はソーマに胴体を斬りつけられ呻いた。
「死ね!」
「この、死ね!」
二人で呪いのように同じ言葉を口にしながら神機でアラガミを断ち切っていくのを見ながらシュンは、第一部隊所属にならずに本当に良かったと心底ほっとした。亀裂の入った尾へ一撃を叩き込むと、結合崩壊した欠片が勢いよく飛び散った。
「お前らおっかねーよ」
やがて動かなくなったコンゴウへ黒い大口で噛みつきながら、シュンは思わず零した。頬の血糊を擦っていたは目を丸くして、しかし苦笑するだけだった。ソーマは既に捕喰を終え、黙って帰還地点へと向かう。その背を追いかけるように踵を返しただったが、ふと思い出したように振り向いた。「シュン」、名前を呼ばれて視線をやるとまっすぐに見据えられ、なんとなくうろたえた。
「助けてくれてありがとう」
「……べ、別に大したことじゃねーし!」
そう言いながらシュンもヘリの到着地点へ駆け出して、の隣で一つ呼吸をすると、何でもないように付け加えた。
「まあ、羽振りのいいミッションなら、また付き合ってやっからよ!」